魔王のオモチャ
『人を殺して嘆いていたヤツを
悪魔なんて言わねぇだろ?』
「で、でも僕は……
何も感じない…」
『あ" ?お前、馬鹿か?』
「えっ……?」
いきなり魔王は、僕を睨みつけて
僕の胸に手を当ててきた
『お前は、現実を受け入れるのが怖くて
心に蓋しただけだろ
それで何も感じないだ?
当たり前だろ!
蓋なんてしたら感情が表に出てくるわけねぇ!!』
「……っ…!!」
『もうお前を苦しめるヤツはいねぇ
いたら、また殺せばいいだけだろ
人間なんて増える一方なんだ
醜い奴等なんて、殺せばいいんだよ
蓋をするな!
もう感情を出して自由になれ!
お前の心は、お前のもんなんだから』
「うう…っ……」
僕は何故か涙が出てきた
魔王の言葉が温かく、そして
僕の欲しい言葉を言ってくれたからだ
僕はもう…
感情を押し殺さなくていいんだ…っ
『はあ……まだガキだな…
やっぱ、お前悪魔にすんのやめとくわ
じゃあな、糞ガキ』
魔王は僕の胸から手を離すと
僕に背を向け手を振って、僕を置いて
どこかに消えようとしていた
「ま、待って…っ!」
『なんだよ?』
僕は魔王の手を握り、いなくならないように言葉をかけた
「悪魔になる!
僕は、もうこの世界に未練はない!
あなたの傍で、あなたを見ていたい!」
この手を離したくない…!
この手を離せば、また僕は一人だ
もう一人は嫌だ…!
この人……いや、魔王なら
僕を見てくれる気がする
僕を、一人にしないでくれる気がする
『それは俺に忠誠を誓うってことでいいんだな?
俺は、ここにいた連中と同じことを
お前にやらせるかもしれねぇぞ?』
「あなたとコイツらじゃ、全く違う!
ここに僕の意志はなかった
でも今は僕がしたい
あなたのために生きていきたいんだ
僕はどんな命令も受け入れるよ
だから…………
あなたの傍にいさせて…」
僕は必死に魔王に縋り付きながら言った
魔王はその言葉を聞いて、ニヤッと笑うと
僕の唇に、さっき自分で傷をつけた腕を押し付けてきた
『舐めろ
そうしたら、悪魔になれる
もうお前は、俺のもんだ』
「………はい…
僕は、魔王のものです…」
僕はアメを舐めるみたいに丁寧に魔王の腕についている血を舐めた
魔王の血は、物凄く美味しくて…
僕は魔王の腕の傷をしばらく舐めていた
舐めていくうちに
変な気分になり、魔王を見つめた