魔王のオモチャ









『僕は何もしないよ〜

僕は………ね?』













オヤジは意味深に笑って言うと
死んでいる勇者を見つめた












なんだ

何故勇者を見ている



何かあるのか?













『ねぇ、トヨ〜』






『なんだよ…』












オヤジは甘えたような声を出し
俺にニコッと笑った














『勇者との対決で



勇者が負けたら……

勇者をもらってもいーい?』











『……………は?』















オヤジは何を言ってやがる?

勇者は死んだんだぞ?



もう負けてるだろ?













『あと少ししたら勇者は生き返るよ

僕が勇者にあげた、お守りのおかげでね』










『なに!?』















オヤジは勇者に近づくと……

勇者の懐から、赤くて小さな袋を出して俺に見せてきた




それは、お守りと書いてあり

その袋から輝くほどの光が出ていた













ゆ、勇者が生き返る…!?














『なんのつもりだ、オヤジ』










『ははっ。そんな怖い顔しないでよ〜



僕はただ……

トヨと勇者の勝負を見たかっただけだよ〜



次に勇者を倒したら、勇者は生き返らない
これで最後にするからさ〜



どっちが強いか僕に見せてよ』















オヤジは、ガキみたいに目をキラキラと輝かせながら笑って言った















『トヨも最初は、勇者とじっくり戦いたかったでしょう?


なら、やってみせてよ』















確かに、勇者と戦いたかったのは事実だ

退屈していた日常を、勇者がいることで
つぶそうとしていた





あっさり、倒したら意味がない

勇者の力も、どれほどのものか分からないままだしな……















『いいぜ、オヤジ
見せてやるよ

俺と勇者の戦いを…』















シャーナの見ている前で、もう一度勇者を殺してやる

そうすれば、シャーナは完全に闇に堕ちるだろう












可愛がってやるよ、勇者…













俺は勇者を黙って見つめた
オヤジはそんな俺を見てニヤニヤと笑っていた





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