魔王のオモチャ







グレンダの手紙には、ただ……







『ごめんなさい』







と、一言だけが綴られていた











そして、その手紙を受け取った三日後……


グレンダは、金持ちの男と結婚した












「なんでだよ…

なんでなんだよ、グレンダ…っ!」










トヨは、グレンダに裏切られたと思った













自分は一途にグレンダのことだけを想ってきたのに……

グレンダは、あっさりと金持ちの男と結婚してしまった















『あーあ、だから言っただろ〜?

グレンダは、君の想いを受け取ることは出来ないって〜』









「………っ…うるせぇ、黙ってろ」













だ、誰だよ…コイツ……













トヨの側には、いつの間にか
トヨには劣るが、端正な顔立ちの男が立っていた












コイツ……

悪魔か…っ!?













その男は、邪悪な気配を醸し出していて

俺は、すぐに悪魔だと気付いた







だが、俺は何も出来なかった



今の俺は、幽霊みたいなもの

声も届かない、触れもしない



悪魔の好きにさせるしかなかった














『そんなもんだよ、人間の想いなんて…

悪魔よりタチの悪い生き物なんだよ
簡単に、裏切り欺く




愛してる……

なんて言葉は幻想に過ぎない



悲しいね、人間って生き物は……』









「………………グレンダ…」










『悲しいね…
寂しいね…

憎い…よね?


グレンダは、君の気持ちには気付かず
幸せに暮らしているよ〜?』















悪魔は、トヨに近づくと
肩に手を置き、耳元で囁いた

それはそれはニヤリと楽しそうな笑みで……














『可哀想なトヨ〜

君が幸せになる日はくるのか………ぐっ!』







「黙れ」














トヨは、悪魔の首を掴むとゾッとするくらい怖い顔つきで悪魔を睨んでいた












『がはっ……悪魔に手を出す人間がいるなんて…

初めてだよ……』









「俺を悪魔にしろ」








『ん?』










「俺を悪魔にしろ

この国を……
あの薄汚い女を消してやる」










『あはははっ。
最高だよ、最高…っ!!

やっぱり、君は最高だ…!!』














悪魔は、自分の首を絞めているトヨの手を掴み離すと……

お腹を抱えて笑いだした













『いいね、いいね…っ!!
なんて面白いんだ!!

まさか、この僕……
魔王に悪魔にしろ…と言ってくる人間なんて…

最高だよ!!
これだから、人間ってやつを見てるのは飽きないんだよ!


よしっ!君を悪魔にしてやろう!
そして魔王にもしてあげるよ



さあ、口を開けて……トヨ』










「んっ………」














ダメだ…っ!トヨ……っ!!!













トヨに俺の声は届かず……


悪魔は、自分の舌を思いっきり噛むと
トヨの頬に手をおき、唇を重ねた


トヨは、その行為に抵抗せず
悪魔の舌を受け入れていた



そして、トヨの身体から
目の前にいる悪魔より、すごい邪悪な気配が満ちていた











ま、魔王…………っ














トヨは、俺が知っている…

魔王になってしまった……












『さあ、新たな魔王よ……

存分に、この世界を楽しめ!!』















そう悪魔が言った瞬間……

トヨは、空高く飛び、宙に浮くと……
この国目掛けて、魔力を放った












『じゃあな、哀れな俺よ……』














そして、トヨは……

魔王となった






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