【短23P】 オレンジ
5歳の夏─────。
「ハァ、ハア、ハア」
私は裸足で颯太くんの家に走った。
5分前に言われた母の言葉が原因で。
『あら、今日は颯太くんが引っ越す日よ?
見送りしないの?』
聞いてなかった。
引っ越すなんてなにも…。
勝手に…かってにいなくならないでよ!
涙が今にも流れそうで必死にこらえて走った。
ここの右に曲がれば、颯太くんの家!!
ぐっ、と振り絞って曲がると、もう出発しそうな車。
そこに、颯太くんは乗り込んだ。
「はやたぁぁぁああ!!」
私はおもいっきり叫んだ。
そしたら、車から出てくる颯太くん。
「な、なんでここに…?」
曲がり角で立ち止まったキリの私のとこに颯太くんはテクテク寄ってきた。
「ヒドイよ!
なんでなにもいわずに行くの?」
思わず涙が溢れた。
私がいいたいのはそうじゃない。
そうじゃないのに…