モデル姉さんのファンは弟くん
~帝
なんだか早くに目が覚めて、予定より少し早いけど副社長の運転で玲蘭の家に迎えにきた。
チャイムを鳴らすと、玲蘭の母親が出てきて玲蘭の支度がまだ終わってないと伝えられた。
俺が早めに来ただけだから、待たされたことには全く苛立ちはなかった。
ただ…あいつが案の定玲蘭にべったり離れようとしないし、挑発したいのか玲蘭を抱きしめながら俺を見て小さく笑った挑発にイライラして。
あいつから離すために、いわゆるお姫様抱っこをすると、あいつも玲蘭も動揺してて多少はスッキリしたかな。
おちょくりすぎて、玲蘭はムッとして先に車に乗り込んじゃったけど…。
俺も玲蘭に続いて車に乗ろうとすると…。
「ねえ。言っとくけど…あんたみたいな奴にお姉ちゃんのことを好きになる資格なんてないから。」
ぐんっと服を引っ張られ、玲蘭の弟に睨みつけられる。
「ははっこんな子どもの馴れ合い程度を恋愛感情と結びつけるとか、幼稚すぎない?ガキが経験も知識もねぇくせに、黙っとけ。」
そう言いあいつを押し返して、俺も車に乗り込んだ。
ーーー…。
「「………。」」
撮影現場に向かう中、玲蘭は未だにむくれている。
わかりやすい反応が面白い。
「ふっ…。」
俺の笑い声に気づいたのか、玲蘭が睨んできた。
「まだわたしのことバカにして笑ってるの?」
「玲蘭のことで笑ってるわけじゃねぇけど?ふははっ。」
「っ!…もう話さないっ!」
びっくりした顔をしたかと思えば、戸惑ったり、恥ずかしがったり怒ったり。
こんなにコロコロ表情変える人、そうそういないだろ。
「はいはい。ごめんって。馬鹿にしてるわけじゃねぇから。」
「…………。」
ふーん。本当に俺のこと無視すんだ?
「…馬鹿にしてんじゃなくて、ひとつひとつの反応が可愛いからじゃん?」
「っひゃ!?」
玲蘭の耳元でそっとつぶやくと案の定すぐに顔を赤く染まる。
「あははっ。あ〜俺、結構その顔好きかも。」
「す…っ!?も、もう本当に知らないから!これから絶対絶対話してあげない!!」
あーおもしろ。本当からかい甲斐がある。
…そんなやり取りをした数分後。
あれから本当に一言も発せず、外の景色やスマホを見ていた玲蘭だったが、気持ち良さそうに眠っていた。