モデル姉さんのファンは弟くん
「意味わかんないっ!!なんで……!!」
悲しさと怒りが混ざったような顔でわたしを見つめ、涙を浮かべている。
「ああ……もう!!だから僕がそばにいなきゃダメだった、お姉ちゃんが頼るのは僕だけでいいのに!!」
「わっ!」
今度は圭がわたしを引っ張り、圭に抱きしめられる。
「ああ、どうにかなりそう…お姉ちゃん、いい加減にして…これ以上僕を怒らせないで。」
あ…。本当に圭が怒った時に聞くこの低い声。
それにいつもとは違い、ぐっと力強く抱きしめられて苦しいほど。
「ちっ。だる。」
後ろから帝くんから舌打ちが聞こえた。
うぅ…どうしよ。気まずすぎるよ、ここ。
「け、圭。ちゃんとお話しするから……とりあえずわたし、お風呂入ってないし、帝くんをお見送りがてら行ってくるから待ってて?」
「はぁ?お見送りなんてしなくていい!」
「う…ごめんね圭。少しだけ待ってて?ここまで運んでもらって迷惑かけてるのにそれはできないよ。よし、タクシー呼んで……と。い、行こう帝くん。」
「…ん。」
「お姉ちゃん……。」
圭が納得してくれてはなさそうだけど…なんとかピリピリした空間から脱出完了。
「…意外。玲蘭のことだから弟の言う通りにするかと思った。」
くすっと笑ってわたしの目線に合わせるように屈んだ帝くん。
「き、今日は感謝してるから。それに、水族館にもまた連れてってくれるんだもんね?」
「うん。そのつもりだけど。」
「楽しみだな…あ、もうタクシー来てくれたみたい!それじゃあ帝くん、今日はありがとう!帝くんもしっかり休んでね!」
「うん、俺も楽しみ。じゃ。」
笑う時とは違う、優しそうな笑顔でそう言い、わたしのあたまを撫でたあと、タクシーに乗って帰って行った。
ドキ…ドキ。
………ん?
帝くんがあんな感じで笑ったのを初めて見たからビックリしてるのかな。
……あっ考え事してる場合じゃなかった。圭が待ってくれてるから急いでお風呂はいらなきゃ。
原因不明のドキドキを追求せず、急ぎ足でシャワーを浴びにいった。