朝、きみと目が合って
つい欲張ってしまい、仕事に区切りをつけたのはもう午後八時半を過ぎた頃だった。

休日は午後からの出社でも、もっと早くに仕事を切り上げることがほとんどなのに。
途中、藤白さんや丘咲さんに声をかけられたけど、「もう少ししてから帰る」と二人を見送った。

パソコンの電源を落とした途端、急激に空腹を感じて、毎朝利用するベーカリーに立ち寄ると、閉店間近のため半額だったサンドウィッチBOXを買い電車に乗った。


その後、ちょうど松屋駅のホームに着いた時にスマフォが震えた。
見ると、藤白さんからの着信だった。

「もしもし? どうしたんですか?」

「いや、瀧本。もう帰ったか?」

「はい。今、マンションの前ですけど」

まだ駅のホームだけど、同じようなものだ。
藤白さんは何か切羽詰まっているかのような声で矢継ぎ早に続ける。

「空! 空見てみろよ。流れ星!」

「えっ?」

いまいち要領を得なくて、それでもどこか興奮した様子の藤白さんの声に、空を見上げながら首をかしげる。

「今日、ペルセウス座流星群の日らしいんだよ!」

「えっ、そうなんですか?」

残念ながら星にはあまり興味がなく、そういった情報には疎い。

「俺もよく知らないんだけど、ネット見てたらたまたまのってて。けど、あんまりよく見えないんだよなあ。瀧本はどうだ、見えるか?」

「えー、私もよくわからないですね」

駅の明るい照明がまともに邪魔してしまっていて、夜空を見上げようとしても目がくらむばかりだ。

「じゃあ、マンションの屋上から見てみたらどうだ?」

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