朝、きみと目が合って
「屋上? うーん、上ったことないなあ。でも、そうですね。せっかくだし、上ってみようかな」

「おう! あー、もうちょっと早く知ったら一緒に見れたのになあ」

本当に悔しそうな藤白さんの口ぶりに、思わず笑みが込み上げてきた。

「ふふっ、本当ですね。じゃあ、屋上に上ってからまた結果報告します」

「おう、待ってる」


一旦、電話を切って改札を抜ける。
無意識のうちに走って『ラヴィアンローズ』のエントランスも通り抜けると、オンボロのエレベーターで五階まで上った。

五階廊下の一番右端。
そう、そこに屋上へとつながる階段があるのは知っている。

しかし、階段を上り切っても、屋上の手前に立ちはだかっている鉄の扉はずいぶんと重厚でそう簡単には開きそうにない印象だ。

果たして、鍵は開いてるんだろうか。

初めての経験にドキドキしながら階段を上ると、そうっと扉のレバーハンドルに手をかけ、ゆっくりと力を加えてみた。


「あっ、開いた!」

思いがけず、易々と扉が開いた。
どうやら見かけ倒しだったらしい。

そのまま見上げてみると、さっきよりも視界を遮るものがだいぶ減りすっきりと夜空が見えた。
雲も少なく、星がなんとなく光って見える。
しかし、光り流れていくものは一つも見えない。

そもそも、流星群ってどういうものなんだろう?


「やっぱり、よくわか……っ」

一度探すことをあきらめて視線を下ろしたその時、心臓がひやっと冷えて口をつぐんだ。

全然気づかなかった。
私の数メートル先に、屋上の柵に背を預け、こちらを見つめている姿があった。

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