朝、きみと目が合って
6月25日(木)
和やかなオフィスが気まずい雰囲気に沈んでしまったのは木曜日だった。
その日も朝から天気はぐずついていた。
どんよりとした曇り空の下、ランチを外で食べてから戻ってくると、珍しく部長に呼び出されてしまった。
窓際を陣取る部長席の前まで出向くと、部長は険しい顔つきで口を開く。
「瀧本さん、ちょっとこれ見てくれる?」
そう言って差し出されたのはパソコンの画面。
私たちが運営しているWebマガジン『ごゆるりと』の特集ページだ。
「あれ?」
確か、昨日更新したばかりの今月の特集は『梅雨を乗り切るお家暮らし』だったはずなのに。
なぜか『梅雨を楽しむお出かけスポット』になっている。
この見覚えのあるレイアウトは……あっ、これ、昨年六月の特集だとすぐに気づいた。
「トップから昨年の特集に飛ぶようになってるの、おかしいよね。伊礼さんに聞いたら、瀧本さんが最終チェックしてくれたってことなんだけど、本当?」
伊礼さんというのは今年、新卒で入社してきた女の子だ。
私のアシスタントのようなポジションで一緒に特集を担当してくれている。
オフィスを見渡すと、伊礼さんはまだランチから戻ってきていないようだった。
特集ページを更新したのは昨日の夜だ。
今日の午前中は連載ページの『台所しごと』にかかっていたので、特集には一切触れていない。
「はい。昨日の夜、私がチェックした後に問題なかったので、伊礼さんに更新してもらうよう頼みました」
「ちゃんと伊礼さんが更新した後も確認した?」
「あっ、いえ。彼女に任せていたので」
「そうだろうね。けど、まだ彼女は新人なんだから。もっとちゃんと見といてもらわないと困るんだよ。こういうミスにつながる」
「申し訳ありません」
この部長の特徴はネチネチと陰湿に、だ。
そして、一説にはこの部長、特に私にネチネチするのが好きという話もある。
「小さいミスが積み重なると信用もなくすし、どんどん読者から見放されていくんだよ。わかるよね?」
「は、はい」
「だいたい、瀧本さんは……」
まずい、これは長くなりそうだ。
今日中に片づけたい仕事が山ほどあるのに。
仕事に戻れないで困っていると、そこへ声が飛んできた。
その日も朝から天気はぐずついていた。
どんよりとした曇り空の下、ランチを外で食べてから戻ってくると、珍しく部長に呼び出されてしまった。
窓際を陣取る部長席の前まで出向くと、部長は険しい顔つきで口を開く。
「瀧本さん、ちょっとこれ見てくれる?」
そう言って差し出されたのはパソコンの画面。
私たちが運営しているWebマガジン『ごゆるりと』の特集ページだ。
「あれ?」
確か、昨日更新したばかりの今月の特集は『梅雨を乗り切るお家暮らし』だったはずなのに。
なぜか『梅雨を楽しむお出かけスポット』になっている。
この見覚えのあるレイアウトは……あっ、これ、昨年六月の特集だとすぐに気づいた。
「トップから昨年の特集に飛ぶようになってるの、おかしいよね。伊礼さんに聞いたら、瀧本さんが最終チェックしてくれたってことなんだけど、本当?」
伊礼さんというのは今年、新卒で入社してきた女の子だ。
私のアシスタントのようなポジションで一緒に特集を担当してくれている。
オフィスを見渡すと、伊礼さんはまだランチから戻ってきていないようだった。
特集ページを更新したのは昨日の夜だ。
今日の午前中は連載ページの『台所しごと』にかかっていたので、特集には一切触れていない。
「はい。昨日の夜、私がチェックした後に問題なかったので、伊礼さんに更新してもらうよう頼みました」
「ちゃんと伊礼さんが更新した後も確認した?」
「あっ、いえ。彼女に任せていたので」
「そうだろうね。けど、まだ彼女は新人なんだから。もっとちゃんと見といてもらわないと困るんだよ。こういうミスにつながる」
「申し訳ありません」
この部長の特徴はネチネチと陰湿に、だ。
そして、一説にはこの部長、特に私にネチネチするのが好きという話もある。
「小さいミスが積み重なると信用もなくすし、どんどん読者から見放されていくんだよ。わかるよね?」
「は、はい」
「だいたい、瀧本さんは……」
まずい、これは長くなりそうだ。
今日中に片づけたい仕事が山ほどあるのに。
仕事に戻れないで困っていると、そこへ声が飛んできた。