朝、きみと目が合って
「ホットケーキ? 焼きたいの?」

「うん、焼けるようになりたいんだ。食べさせたい人がいて」

意外な言葉に、目を丸くした。

「彼女に、とか?」

「いや、違うけど。でも、大好きな人には変わりないかな。僕の焼いたホットケーキが食べたいって言ってくれて」

柳さんがとても優しい目をして言うから、その「大好きな人」が誰なのか気になってしまう。

「明日、空いてる?」

「あ、うん。何も予定はないけど」

明日は何をしようかと、映画を観ながら考えていたんだった。

「じゃあ明日、教えてくれない?」

「えっ、教えられるほど上手くないよ? それどころか、思い出しながら焼くことになると思うんだけど」

「そっか。じゃあ、一緒にホットケーキを焼こうってことで、どう?」

突然のお誘いに戸惑ったけど、別に断る理由はなかった。
嫌だとか、面倒なんていう気持ちは少しも顔を出さなかったから。
むしろ、心の奥で楽しそうだと感じていた。

「うん、私でよければ」

「ありがとう。じゃあ、午後一時にこのマンションの前に待ち合わせでどうかな?」

「え、どこか行くの?」

てっきり、どちらかの家の台所で作るものかと思っていたのだけど。

「うん、まあ。それは明日までのお楽しみってことで。じゃあ明日、よろしくね」

「わかった。こちらこそ」

いろいろとよくわからない。
それに結局、仕事は何をしている人なのか聞きそびれた。

まあ柳さんの言う通り、明日を楽しみにするとしよう。

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