朝、きみと目が合って
「何だろうね。単純に、瀧本さんと一緒に作るのが楽しそうだと思った。それじゃだめ?」

大きな瞳でじっと見つめられて、少々たじろいだ。

「わ、わかった」

まったくもってよくわからなかったけど、わかったことにしておこう。
私なんて、足手まといにしかならないような気がするんだけどな。

「じゃあ、すぐに道具と材料、用意するから待って」

柳さんは引き出しからボウルや泡立て器を取り出す。

「あっ、ねえ、昨日柳さんが言ってた、柳さんの焼いたホットケーキが食べたい人って?」

ふと思い出して聞いてみた。

「常連客のおばあちゃんなんだ」

あー、やっぱり。お客さんだったんだ。

「この近くに住んでる人で。祖父の代の時から、よくホットケーキを頼んでたんだ。最近は変わりにいつもホットサンドを頼むんだけど、いつか生きている間に僕のホットケーキが食べたいって言うから」

「へえ、そうだったんだ。じゃあ、叶えてあげないとね」

「うん。やっぱりそういう気持ちになるよね」

やらないとっていう風に表情を引き締めて、柳さんが頷く。

「よし、頑張ろう! 私なんて料理のプロでも何でもないけど、手伝えることはするよ」

「ありがとう。心強いよ」

柳さんの笑顔に、私もしっかりと頷いて見せた。

その後、黒のカフェエプロンを借りて、柳さんに並んで立った。

「じゃあまず、お互いにどうやって作るか見せ合おうか。瀧本さんはいつもどうやって作ってる?」

「ええと、私はね……こんな感じなんだけど」

昨夜、復習し書き出してきたメモ切れを取り出した。

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