朝、きみと目が合って
珍しいこともあるんだな。
今朝の出来事を振り返りながら、オフィス最寄りの森ノ下駅構内にあるベーカリーで朝ごはんを買う。

朝から湿気でじっとりとする中、高層ビル群の間を縫うように十分近く歩きいつも通り午前七時、オフィスに到着した。


私が勤めているのはIT関連の中堅企業、ミナミクリエイトだ。
Webサービスの企画・運営を幅広く行なっている。

その中でも今、私が携わっているのはライフスタイルについてのWebマガジン『ごゆるりと』の編集業務。
いくつかの連載企画を受け持ち、取材や記事作成に奔走している。

毎朝、まずはコーヒーを淹れ、肩甲骨の辺りにまで伸びた真っ黒い髪をゴムで一つに束ねる。
この時、少し癖っ毛なのがやっかい。

そして、パソコンの電源を入れると、手始めにメールチェックから行なう。
今日の朝ごはんであるクロックムッシュをかじりながら。

少し行儀が悪いかもしれないけど、朝の七時台なんて他にまだ誰も来てない。
朝だけは私の貸し切りオフィスだし、少しくらい好き勝手に過ごさせてもらってもいいはず。

昨夜遅くに届いていたメールに返信した後は昨日、途中までしかできなかった連載記事のチェックに取りかかる。
これを済ませば、ちょうど始業時間の九時になるだろう。

朝二時間早く作業するようになってから、おかげで帰宅が三、四時間早まった。
やはり朝の時間帯というのは偉大だ。

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