朝、きみと目が合って
午前八時過ぎになると、これもまたいつも通りオフィスのドアが音を立てて開けられる。

「おはよう! やっぱり、今日も早いなあ」

「おはようございます。そう言う藤白さんだって」

私の直属の上司である、藤白さんは毎朝八時過ぎに出勤してくる。
Webマガジン『ごゆるりと』の編集長で、歳は確か三十二歳。

一目で体育会系とわかるほど背は高く体型もがっしりしていて、笑顔は人懐こい。
目鼻立ちはくっきりとしていて、眉も凛々しく男らしいし。
性格だって面倒見が良く、同僚や後輩たちからも慕われている。

そんな文句のつけようがない男前(藤白さんの場合、イケメンでなく男前と言いたくなる)かと思いきや、時々……いや、よく小さなことで失敗してはみんなに笑われる残念な一面も。
いざという時にはビシッと決めることができる人なのに、何でだろうとその度に周囲の人々は首を傾げるばかりだ。


「瀧本はいつも何時に来てるんだ?」

「七時ですけど」

「うわ、早! いっつもか? よく起きられるなあ。俺、これでもだいぶ頑張って来てるんだけど」

確か通勤時間もそんなに変わらなかったよなあ、と藤白さんはぶつぶつ言っている。

「慣れると平気ですよ」

「そうか、俺もお前を見習うかな」

あれ、どっちが上司だっけ……とつい心の中で突っ込んでいると、「おはようございます」と他の社員たちもちらほらとまだ少数ながら顔を出し始めた。

< 4 / 25 >

この作品をシェア

pagetop