朝、きみと目が合って
今朝の朝ごはんだったたまごサンドを食べ終えた七時半過ぎ、また驚くことがあった。

「よう、おはよう」

「藤白さん、おはようございます。今日、早いですね」

編集長の藤白さんがいつもより三十分早く、オフィスに顔を出したのだ。

「やっぱり、七時は無理だったわ」

苦笑いを浮かべながら、藤白さんが私の隣の隣に位置する自分の机に通勤カバンを置く。

「暑いよなー」と濃紺のジャケットを早速脱ぎ、さらに薄くストライプ柄の入ったシャツの袖を豪快にまくった。
藤白さんの太くたくましい腕があらわになる。

「別に無理しなくても。それぞれのペースがあるじゃないですか。私も朝型になったのって最近ですよ」

確かに昨日の朝、私を見習うだなんて言っていたけど、まさか本当に七時に出社しようと試みるとは。
私は曖昧に微笑みながらも、意表を突かれたとばかりに無意識のうちに胸の辺りを手で押さえていた。

「けど、やっぱり朝ってはかどるしな。これからもなるべく頑張ってみる。だから、よろしくな」

「は、はい」

藤白さんは眩しいくらいの笑顔を私に向けてくれる。
せっかくオフィス貸し切りだったのに、とつい顔に出してしまいそうになるのを慌てて引っこめ、私も小さく頷いた。

よし、これからは朝ごはん、もう少し早くに食べきろう。

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