朝、きみと目が合って
6月19日(金)
翌日の水曜は曇りだった。
木曜と金曜は雨が降った。

藤白さんはだいたい、午前七時半から八時の間に出社するようになった。

「やっぱり、毎朝七時半はきついわ」

そうぼやくくせに、それでも早く出社しようと頑張っているみたい。


そうして週の後半が過ぎていく中、ひとつ変わらなかったことはと言えば、毎朝、電車の窓からやっぱりあの男性と目が合ったこと。
これは偶然なんかじゃない。
あの人、あえてそうしているんだ。

いつも同じ時間にベランダに出るのはまだわかる。
だけど、必ずと言っていいほど目が合って、しかもそれを逸らさないなんて。

少し気味が悪くなってきた。
いや、そういう私だって同じことをしているんだから、どうこう言える立場じゃないのかもしれないけど。

来週からはドアの近くに立つのをよそうか。
むしろ、電車を一本ずらそうか。

先週まで平穏なはずだったのに、急に妙な不安が私の胸をくすぶり始めた。

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