最初で最後の嘘



 瑞希のただ一つの言葉で俺の世界は変わった。


 たくさんの友人がいたし、勉強もスポーツも好きだし。


 家族にも不満はないし。


 恵まれていた。


 けれど、俺にはそれだけでは足りない。


 瑞希と奏兄がいて、それで俺の世界は構成されていて。


 だから、俺は毎日が幸せだった。


 当たり前の日常であったけど、それが幸せであったと今になって気付く。


 瑞希と二人の時間を共有して、それで、時々、奏兄が色んなことを教えてくれて3人で笑って。


 でも。


 そんな俺の世界はあっけなく一瞬で崩れた。


 俺は瑞希のことを幼馴染としてではなく女の子として好きで。


 でも、瑞希は奏兄のことが好きで。


 3人ではなく、俺は瑞希を独占したくて。


 奏兄が邪魔で。


 瑞希に好かれている奏兄が憎くて。


 全てが壊れてしまった。





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