最初で最後の嘘
瑞希は不思議そうに目を丸くする。
「2人きりで話したい」
端的に告げると、彼女は頷いて立ち上がる。
昔に戻ったかのようだ。
こうして俺の後をいつも付いてきてくれた。
何の不安もなく、俺を信じて、俺を頼ってくれた。
「すみません。吉川を少しお借りします」
困惑する瑞希の両親に頭を下げる。
「歩君。後じゃダメなのかい?これから式なんだ」
おじさんの焦る声に俺は微笑んでみせた。
「疎遠だった期間の埋め合わせも兼ねて結婚のお祝いを言いたいんです」
おじさんもおばさんも俺の思いを知っている。
警戒するのは当然のことだろう。
それでも、強く言えないのはわかっていた。