最初で最後の嘘
「それなら、何も2人きりでなくても」
おじさんはそれでも俺に弱弱しい視線を向けたが、瑞希がそれを遮った。
「お父さん、私も時田君とお話したいの。良いでしょ?」
誰もが瑞希に弱い。
昔から紅一点の瑞希は俺や奏兄だけでなく、三家族みんなに特別に可愛がられていた。
そんな瑞希の言葉を受けて黙り込むが、おじさんは不安げな表情は変わらない。
だから、努めて穏やかに安心させるように言い含める。
「すぐに戻りますから」
心からの謝罪を胸の中だけでする。
彼女と会わせることはもうないかもしれないのだから。
これから俺は瑞希を攫っていく。
おじさんにとっての宝物を奪っていく。