最初で最後の嘘
自分の両親も、瑞希の両親も、奏兄の両親も、みんなを裏切るのだから。
そして、瑞希のこの信頼も裏切るのだから。
彼女と心通わせるなんていうのは夢物語で終わるのかもしれないと。
おじさんの不安げな視線を振り切った時に、頭をかすめた。
それでも、こうして彼女が俺の隣にいてくれる。
懐かしい心地良さを感じて、やっぱり俺が安心できて幸せだと思える場所は瑞希の隣なのだ。
頭で理解するよりも心に感じる温かさでわかった。
10年以上も前に手放したはずなのに、あの時感じていたものが昨日のように蘇る。