最初で最後の嘘





「お互いに成長した。あの頃とは何もかも変わった」



 俺のほうが瑞希の近くにいたのに、いつのまにか奏兄に奪われていた。



「そうだね。時田君がこんなにも大きくなった。小学生まで私と同じくらいだったのに」



 少しむくれる瑞希の姿は小さい頃と変わらない。


 変わったものもたくさんあるけど、変わらないものもあるのだ。


 彼女と奏兄と向かい合って、そのことを実感する。



「まさか、お前が奏兄を射止めるとは思わなかった。奏兄なら、どんな女でも選び放題なのにな」



 ずっと、そう思ってた。


 瑞希が奏兄に惚れるのは必然だけど、奏兄は5歳も下のガキくさい瑞希を選ぶなんて思っていなかった。



「そうだね。嫌ってほど同じこと色んな人に言われた」



 特に奏くんのこと好きな女の人にね、なんてほわほわして笑う。


 その笑顔が癪に障った。


 何でもないことのように言ってのける姿が、それだけの代償を奏兄と一緒にいるためならあるとでも言うのだろうか。




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