最初で最後の嘘
「ああいうのと結婚したら、妬みからあることないこと言われて辛い思いするのはお前だぞ?」
「それでもいいよ。それでも私は奏くんといたい。それにね、奏くん精一杯守ってくれているもの。小さい頃からずっと」
「……バカな女。何にも知らないくせに」
俺の気持ちも奏兄の気持ちさえ知らないくせに。
ふわふわと笑って純白のドレスを翻して。
本当にバカな女。
こんな意地悪なことしか言わない幼馴染に嫌な顔せずに隣にいるなんて、本当にバカな女。
「何も知らない、ってこともないんだよ。時田君が私のことを嫌いでも私はずっと時田君が好きだって、それくらいはわかってる」
「……………………………」
立ち止まった俺の横を瑞希は穏やかな顔して追い越す。
風に靡いて揺れる木々から眩しい太陽が視界に入り目を細めた。
その細めた視線の先には瑞希がやっぱり笑っていた。