最初で最後の嘘
次の週に登校班に顔出した瑞希は元気になっていて少しほっとした。
でも、もう今までのように接することはできない。
俺はずっと、そうこの時から今まで逃げていたから。
瑞希は俺に怯えながらも、ぎこちないながらも笑顔を見せた。
どうして、こんな俺に笑顔を見せようとするのか。
苦々しくてやっぱり俺は無視をした。
その時の瑞希の表情も気持ちも未だにわからない。
何故、俺のような男に構うのだろうか。
毎日、瑞希は俺に、おはよう、と声をかける。
最初は恐れながらだった。
でも少し経つと、いつもの笑顔で、おはよう、と言うのだ。
あの時のことがなかったかのように。
俺がずっと無視しているにも関わらず。
毎年、チョコのお返しはお袋が買っていて、俺のチョコの個数を数えて、小さな袋詰めのお菓子を買っていて。
それにプラスして瑞希のも買っていた。
彼女にだけは特別を。
自分で選ぶなんて気恥ずかしくてできなくて、でも、お袋が特別を買ってくれていたからそれを毎年手渡していた。