最初で最後の嘘




 女を知って、色んな女に手を付けてみたくなったのだ。


 勉強と部活に追われていた、俺は変わった。


 俺は真っ当なふりを奏兄と瑞希の前でしていただけに過ぎない。


 あの二人が真っ当だったから、それに合わせていただけで。


 だから、二人と離れてようやく本来の自分が出たのかもしれない。


 女と付き合うようになってからは、今まで以上に瑞希のことなど思い出しもしなかった。


 運悪く会ってしまった時に笑顔と共に親しげに話しかけられ、気分が悪くなるだけで。


 苛立って怒鳴ってしまって泣かせて、胸を痛めて、瑞希は俺のことをどう思っているのかと考えてしまうくらいで。


 だから、色んな女と付き合う中には、瑞希みたいな典型的な女もいた。


 甘えたがり屋で綺麗と言うよりは可愛いタイプ。


 でも、やはり続かない。


 瑞希を思い出させるからとか、そういうことではなく俺はどんな女とも長続きしなかった。





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