最初で最後の嘘
「お前みたいなガキと一緒にすんな。ウザい」
笑顔の瑞希を遮り、冷たく言い放つと、しょんぼりした姿を見せる。
「ごめんなさい」
無理やり笑みを作って謝るのだ。
いつもこうなる。
だから、瑞希となんか顔を合わせたくない。
いつからだろう。
俺が瑞希に怒鳴らなくなったのは。
冷たい態度でしか瑞希に接することができなくなったのは。
いつからだろう。
瑞希が泣かなくなったのは。
無やりな笑顔を必死に浮かべて耐えるようになったのは。
ささやかに変化した俺と瑞希。
それでも、俺が瑞希に向ける思いは変わっていなかった。
自分の思いから逃げ続けていただけで何も変わってなんかいなかったのだ。
瑞希の謝罪なんて無視をして、俺は彼女に目だけで自分の部屋に行けと合図した。
彼女は奇妙な視線を俺と瑞希に向けたが、瑞希に落ち着いた笑顔で会釈すると素直に従う。