最初で最後の嘘
第2章
変わらぬ日常
「おーい。あーゆーむくーん」
「何だ?」
俺は丹羽を無感動に眺めた。
「君は実に冷たい。僕で良ければ相談に乗るのに」
「てめぇーに相談することなど何もない」
「まぁまぁ。僕が本を読みたいと言ったばかりに君は何かを大きな壁にぶつかった。なら、僕に責任の一端はある」
「……………………」
あの後、俺は家に戻らなかった上に、電話をすることもしなかった。
当然、翌日戻った時に散々怒られた。
お袋と親父がタッグを組んでだ。
伊織を駅に送ってそのまま消息を絶った俺の携帯には両親だけでなく伊織からの着信履歴で埋め尽くされていた。
そんなことを露知らずな俺は朝方に家に帰ると、涙目のお袋に殴られ説教。
ただ、それさえ耳に入らなかった。
機械的に謝罪の言葉を繰返してやり過ごそうとした。
けれど、そのようなささやかな怠慢さえ現実は見逃さなかった。