最初で最後の嘘
「あんたらの顔に似ただけだろ?」
俺は瑞希のことを忘れてない。
ずっと思っている。
ずっとずっと想っている。
気持ちだけを止めることはできなくて、時計の針を止めて。
水の流れを塞き止めて。
でも動き出した。
流れはじめた。
止めていた分だけ、目まぐるしく激しく。
こんなにも、瑞希のことが欲しくて。
彼女の全てを奪い尽くしてしまいたい。
瑞希と心を同じくできるならば、それが一時の後の死でも構わない。
積もり過ぎた思いに気が付いた時には、その重さに俺は押し潰されていたのだ。
「いや、佐伯さんとの関係を見ると。責任というより、良いきっかけを僕は君に与えたのかな?」
「…………別に伊織とは至って、ふつーだ」
「ふむ。なら、誰とはふつーではなくなったんだい?」
「………………」
「黙秘かい?そんな顔しないでくれたまえ。君に似合わない。君はいつでも無表情で顔に出やすい人間でいてくれないと」
「矛盾してるぞ」
丹羽なんか無視すれば良いのに、どうしても、こいつの話を聞いてしまうと口を出さずにはいられない。
それは、放っておくと全てが白日のもとに晒されてしまいそうだから。