最初で最後の嘘
「『世間的には』か。君は嘘が吐けない。暴かれる嘘を吐くか正直か。歩のそういうところが好きなんだ」
純粋に丹羽は俺を誉めている。
こいつこそ、嘘偽りを嫌い、それらを排除して生きている。
俺を陥れているわけではないのに、俺はこいつを恐れている。
「歩にとっては、佐伯さんはくだらない存在ってことだろ?だから、熱血くんと話し合うのが時間のムダというわけだ」
「……違う。伊織をどうでもいいなんて思っていない」
「罪悪感かい?だから、僕は言ったんだ。乙女の一生は短……」
聞くに耐えられなく、俺は机を思いっきり叩き丹羽を黙らせる。
「丹羽。怒るぞ」
「もう怒っているじゃないか。図星をさされて?それとも佐伯さんはまだ歩にとって価値があるってことかい?」
丹羽は人を怒らせようが追及をやめない。
俺の圧し殺した怒りに丹羽は、やれやれと肩をすくめた。
「僕には正直に話せば良いのに。吹聴したりしないからさ。それとも、自分が最低なのを認めたくないのかい?佐伯さんは君のことが好きだ。でも君は彼女のことを好きじゃない」
この間と同じくきっぱりと言い切る丹羽。