最初で最後の嘘
「事例その3のその3。君は浮気をしている。佐伯さんを避け、その代わりに女性の家を渡り歩いている。これは終わりのサインだ」
俺を咎める風でもなく……というより、何故それを知っているのか。
背筋に嫌な汗を感じた。
「……お前って、俺のストーカー?」
「やめてくれ。僕にその気はない。毎回違う香水の匂いをさせて、オマケに今日はキスマーク。これで気付かないなんて人間でいる意味がないよ」
丹羽は俺の首筋を指さす。
ため息は丹羽への完全なる敗北宣言。
「事例その18まであるけど、まだ聞くかい?」
首を傾げ、いつもと同じく機嫌良さそうに笑う丹羽。
「遠慮しておく」
「そうかい?で、歩。何があったんだい?僕が相談に乗るよ」
振り出しに戻って、俺は苦笑いして汚い天井を仰ぎ見た。