最初で最後の嘘











 屋上へと続く階段を登る。


 夏の生暖かい空気を感じながら、タバコの煙を吐き出す。


 丹羽は自殺と言った。


 別に積極的にするつもりはない、従いあの時落下していればそれは殺人。


 というか、ここから飛び降りても死なない確率のほうが圧倒的。


 だが、下手をすれば死ぬかもしれない。


 あの時の俺も何か少しのきっかけさえあればフェンスを掴む手を離しただろう。


 そして、今。


 きっかけならある。


 あのふわふわとした心地良い世界が味わえそうだ。


 生ぬるい風と浮遊感がここにはあるのだから。
















「歩!?」



 丹羽が屋上の扉を開けたのが一瞬見えたが、脳裏には瑞希の泣き顔が浮かんだ。


 何だよ。


 笑顔が見たかったのに。






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