最初で最後の嘘
最後の後悔
「歩!!」
何度も呼ばれた。
でも、俺の意識はすぐに眠りの世界へと迎い呼び掛けに応えることはしなかった。
だが、今回はぼんやりとした意識が次第へ覚醒していく。
「……お、ふくろか…」
覚醒すると同時に酷い痛みが身体に走った。
お袋の号泣する姿を見てから、辺りを見回すと、親父と伊織と丹羽。
ほっとしたような怒っているような複雑な表情だ。
「やぁ~歩。お目覚めかい?君は実に運が良い。下が植え込みだったからって左足の骨折だけで済んだのだから」
「丹羽……」
「でも、感謝したまえ。君が酔っ払って足を踏み外したのを僕が目撃してすぐに救急車を呼んだのだから」
いつも以上に不必要なほどの丹羽の笑顔はこの場の空気とはミスマッチだったし、誰も和むものはいない。