最初で最後の嘘





 泣いていないのに、何故か泣いているように見えて。


 死んでおけば良かった。


 こんなことになるなら、死んでおけば。


 1人で消えていれば。


 もう無理だ。


 限界を超えてしまった。




「二度と来るなっ!お前の顔なんか見たくない!お前を見ていると気分が悪くなる。出てけ……」



 瑞希から目を反らした。


 まっすぐに俺を見る瞳を見ていると手にかけてしまいそうになる。


 一緒に死のうと。


 最期に俺のことを考えて欲しいと、奏兄のものになるのなら、二人で死のうと。


 俺は異常者だ。


 瑞希を傷付けたことに罪悪感を抱いているくせに、瑞希を殺してしまいたいと思っている。


 自分の思いが叶わないくらいで。


 それを俺は、それくらい、とは思えない。



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