最初で最後の嘘
「うん。もう覚悟を決めたんだろ?君は瑞希さんを他の男に渡すことなんてできない」
「……その通りだ。だが、この身体じゃ、拐うこともできやしない」
俺の頭の前に腕をつき、楽しそうに笑う。
両親は疑心暗鬼だが、俺は盛大にやらかすことに決めた。
疑っているだけの警戒レベルでは、俺の計画を阻む要素にはならない。
「激情に流されてはダメさ。逃亡後の生活は長い。腰を据えて考えよう」
「……犯罪に手を貸す気があるのか?」
「もちろん。君は僕の友さ。歩が瑞希さんの結婚をぶち壊したいというならば、協力するさ」
「丹羽……」
「何だい?」
美しき友情に感謝したいところだが、やっぱりその前に。