最初で最後の嘘






「お前に押し倒されているようで気味が悪い。……どいてくれ」



 きょとん、と一瞬の後に。



「君は細かい男だな。まぁ、綿密な計画を立てるには向いている」



 ぴょん、とウサギのように跳ね上がる。



 くるりんとした愛くるしい髪型に妙に似合う動作。



「とりあえず、貴重な乙女の数年を奪った罪を謝罪したまえよ。僕たちの計画に彼女はいらない」



 伊織の肩を持っているのかいないのか理解に苦しむが、そうだな、と平然と返している俺の罪の意識のなさこそ理解に苦しむところなのだろう。


 異常者がタッグを組んだら最後。


 後戻りはできない。


 破滅にしか進まない。


 それでも、瑞希が手に入るならばすべてのものが犠牲になっても構わない。



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