最初で最後の嘘
丹羽を直感的に役に立つと思ったのは、崖道の案内人としてだったのだろう。
「4ヶ月あれば君も万全になっているはずだ。これから佐伯伊織に殺されさえしなければね」
至極真面目に腕を組む異常者に、安請け合いをする。
「穏便に終わらす」
さてさて、面倒ごとをさっさと片付けよう。
「じゃあね。また明日来るから、ごゆっくり」
丹羽は親指を突き出し、エールを送って去っていく。
余計なことを。
「知ってる?」
伊織は可笑しそうに口を歪めた。
「歩と丹羽君が世間様に憚る関係だって言われてるの?」
「はぁ!?」
顔も中身も正反対なのに仲が良いのと、良く丹羽が俺に抱きついているかららしい。
伊織はりんごの皮を剥きながら、そんなことを言う。