最初で最後の嘘
伊織が置き去りにした紙袋の中身をしゃがみこんで一つ一つ確認していく。
その表情は伊織の心情を察し、今にも泣き出しそうで。
まるで、俺だけが頭のイカれた人間のようだ。
「佐伯さんの思いを歩は踏みにじった。そして、これから先。君のご両親、瑞希さんのご両親、婚約者、その家族、そして君の愛する瑞希さんの人生も無茶苦茶にする」
鋭い眼差しで俺を見上げる丹羽に、俺は迷うことない。
「丹羽が協力しなくても、敵にまわっても、俺はやめるつもりはない」
「僕を敵にまわしたら、なかなか厳しいよ。ここで殺しておいたほうが良い」
憐れみの表情は伊織へ向けたものではなく、間違いなく俺へと向けられたもの。
「いや、お前は俺の友人だ。害になっても殺すなんてできない。というか、殺人はヤバイだろう」
俺の言葉に面食らった顔をしたかと思うと、次の瞬間、にこっと笑った。
瑞希の笑顔を思い出させた。
きっと、それは純粋なる俺への好意を表しているからだ。