最初で最後の嘘
「僕は君をただの友達とは思っていない。僕の親友だ。佐伯さんは可哀相だけど、歩の手助けをしない理由にはならない。僕は全力で君をいつまでも支えるよ。二言はない」
「……ありがとう」
こいつに何かあった時は、きっと俺は自分を犠牲にしても駆け出して行くのだろう。
それは、丹羽が俺の大事な友だから。
「二言はないのだが、明日来るって言ったのは訂正させてくれ。最初に君の母君と今日は僕が見張ってると約束したんだ」
生真面目な表情の丹羽に笑いながら、伊織が剥いたりんごを口に入れた。
すっぱいりんごは伊織のかすれた声を思い出させて。
かみ砕くたびに、ごめんと心の中で何度も謝罪した。
でも、言の葉に乗せることはない。
きっと、一生。
吐き出さないで、心の中で飼い殺すべき感情だ。