最初で最後の嘘
「あのね、ナイショだよ。時田君だけに言うんだからね。ぜったいにナイショだよ?」
秘密の共有なんてありふれたものも、彼女と二人だけのものなら俺にとっては特別。
でも、そんな感情を素直に表現できるほど子供ではなくて。
素直に表現しても良いと知っているほど大人でもなくて。
俺はそっけなく、早く言え、とため息を吐いた。
「あのね……私……」
奏くんのこと好きなんだ。
この瞬間の俺の顔の強張りは尋常じゃなかったと思う。
それを自制できるほど大人ではなかったし。
彼女の言葉の意味を正確に理解できないほど子供でもなかった。