最初で最後の嘘
「結婚式で花嫁を攫うなんて、最悪な手段だよ」
「結婚をぶち壊さないと意味がない。最悪、連れ戻されても結婚はなくなるようにな」
「でもさ、本当に歩はできるのかい?」
マウスを動かし勝手に注文して、満足げにしながら俺へと目を向けた。
「瑞希さんが君と逃げてくれるなら何の問題もない。けれど、彼女にその意思がなかったら?黒崎奏を愛していると言われたら?」
「…………そんなの想定内だ。無理やり連れて行くつもりで計画してるじゃねぇか」
瑞希の意志なんて関係ない。
俺へ気持ちがあってくれればそれ以上の喜びはない。
けれど、それは現実的でない。
時間をかけて、彼女の気持ちを解いていければと思っている。
そして、俺への恨みも憎しみも彼女の全てを背負う覚悟はある。
ずっと、俺のことを見てくれなくてもそれでも、俺はやると決めた。