最初で最後の嘘
ポーカーフェイスを気取っても、丹羽は俺の心理を読む。
嫌な部分を暴いていく。
「もしくは、激情にかられて」
ほら、短い期間でも嫌と言うほど味わってきた。
鏡のように自分をそのまま映し出される。
「彼女を手にかけるか」
俺は何も答えなかった。
ただ、丹羽から目を外した。
「彼女を無事に奪えるように感情のコントロールを意識したほうが良い。血生臭い話は御免だよ」
一週間後。
後悔を重ねることがもう二度と起こらないように。
「大丈夫だ。俺は大丈夫だ」
自分に言い聞かせながら、彼女のメールを消去した。