最初で最後の嘘
「歩に言われたくないな。花嫁泥棒の方が罪は重い。いや、花盗人は罪にならないとか言うから、僕だけ犯罪者!?そんな馬鹿な!!」
「いや、お前は馬鹿だろ。もう俺は行くぞ」
わたわた慌てる丹羽を一瞥し、車のドアを開けたが、丹羽に腕を掴まれる。
真っ直ぐに俺を見つめるのだ。
丹羽のこういう表情は嫌いだ。
「君に協力するって約束しておいて、今さらこんなことを言うのは気が引けるのだが許してほしい」
「……何だ?」
「こんなことをしても誰も幸せにはなれない。みんなの人生を滅茶苦茶にする。君に立ち向かう勇気があればと思わざるおえないよ」
「…………」
そうだな、俺もそう思う。
何も言わずに外へ一歩踏み出す。
「健闘を祈るよ」
丹羽はにっこりいつも通りに笑った。
それに手を上げて答えて、俺は歩みを進めた。
もう、降りることができない舞台へと。