最初で最後の嘘
控室の裏手にあるソファーで俺は天井を仰ぎながら、何度も繰り返した今日のシュミレーションを繰り返す。
所詮はシュミレーション。
現実は思い通りにならない。
けれど、丹羽と二人であらゆる可能性を想定して作り上げた計画だ。
これから起こる悲劇など知らぬ人々の笑い声が異空間のよう。
こうして、参列者を眺めてみると俺は瑞希のことを何も知らないと痛感する。
そう、交友関係だって小学の時しか知らない。
今日招待している瑞希の友人たちのほとんどを俺は知らない。
そう、10年以上の月日は俺と瑞希に大きな溝を作った。
それでも、ずっと瑞希が好きで思いを募らせる。
瑞希といると到底穏やかではいられない。
情熱的な愛は一過性のものだなんて誰が言ったのか。
紅蓮の炎は決して消えないのと同じだ。
その炎に身を投じた俺の未来は今日で大きく変わる。