最初で最後の嘘
瑞希の意味する『好き』が恋心だとわかった。
俺が奏兄を慕う気持ちとは別物だと。
女の子は男の子と比べると、早熟なんて言ったりするが瑞希には関係のないことだと思っていた。
泣き虫で意地っ張りで甘えたがり屋で、いつもいつも俺の名前を呼ぶ瑞希が恋をしているなんて。
ましてや、その相手が奏兄で、自分が恋をしていることに気付いているなんて衝撃だった。
いや、本当は俺はそれ以上のショックを受けた。
そう、俺は彼女に。
瑞希に恋をしていた。
彼女の告白で気付き。
そして、恋に気付いた時には失恋していた。
その後のできごとは覚えていない。
ただひたすら、ショックで。
でも。
そう、俺の袖を掴まなかった小さな瑞希が一瞬だけ頭を過ぎった。
それだけが今も記憶に残ってこびりついて忘れさせてくれない。