最初で最後の嘘





 これから起こることを知ったら、このお人好しの幼馴染はどんな顔をするのだろうか。


 その感情は愉快さと憐れみが混じったような、そんな感情。


 罪悪感などないのだから、やっぱり俺は奏兄を憎んでいるのだ。


 瑞希を俺から奪った奏兄に憎悪を感じている。



「俺が行ったら、身体に障ると思ったからだ」



「何だよ。吉川のことで怒ってるのか?なら、今殴れば良い。一発くらいなら黙って殴られてやるぞ」



 そう、その一発では到底許すことのできないほどの痛みを奏兄はこれから抱えていくのだから。
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