最初で最後の嘘




「そっか。なら、これにも答えてくれないか?今日は何やらかすつもりだ?」



 奏兄はお見通しらしい。


 俺が二人を祝うためにここにいるわけではないと。


 それでも、知らないフリをして否定して確信を持たせないようにするのが最善だ。



「さっきから変なことばっかり言って。結婚式でナーバスにでもなってるのか?」



「そうかもな。これから言うことは、神経質な男の戯言だと思って聞いてくれ」



 俺を追及することあっさりやめて、懐かしむような笑みを浮かべて話し始める。


 やっぱり、どこまでも大人で自分との違いを見せつけられているようだ。



「俺さ、お前たちが生まれた時すごく嬉しくて。絶対に好かれたいなんて思ったりしてたんだ」



 洗練されている。


 どこまでも洗練された大人だ、奏兄は。


 こんなに何もかもを魅せることができるのは、奏兄だけだ。



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