僕は二度、君に恋をする
以来、僕は椎木マキという自由奔放なクラリネット吹きと共に演奏してきたわけだが、憧れと恋愛感情は切り離すのが難しい。
そもそも、僕は音楽に惚れたのか彼女に惚れたのかがわからない。
もし彼女の音楽に恋をしたならば、仮に勘違いして付き合っても、恋人のすれ違いという悲劇しか待っていないだろう。そして僕らは共に音楽をすることも叶わなくなるはずだ。
そして何より、マキには彼氏がいた。その先輩は、僕のひとつ上、つまりマキよりふたつ上である。
とても背が高くて、ワイルドな風貌だが女子学生からはイケメンと呼び名が高くモテモテ。女の子にしては身長のあるマキでも余裕で見下ろしていた。
マキとほぼ同じ目の高さで話す僕には、到底敵わない相手だった。
ふたりはラブラブだった。