僕は二度、君に恋をする



 ある金曜日、僕は夕方銀座に行って、楽器店で楽譜を吟味していた。

 店内BGMは僕の好きなピアニストの新しいCDで、僕はそのCDも買おうかどうしようか迷っていた。


「ジョン、何見てるの?」


僕を呼ぶ声に振り返ると、そこにはマキがいた。


「あぁ、ドビュッシーなんだけどね。どっちの出版社の買おうかなって。」

「へぇ、ドビュッシー……。」


マキは僕が見ていた譜面を手に取った。


「ジョンはフランスもの好きなの?」

「んー、嫌いじゃないけれど、ちょっと苦手意識があって。だから勉強してみたらって、先生が。」

「なるほどねー。」


マキはぱたんと楽譜を閉じて僕に返す。


「わたしはドイツもののが得意だなぁ。フランスもの、どうもムズムズしちゃって。」


 僕はちょっとだけどきどきしていた。

 もしマキがひとりで来ていて、この後用事がないのならば、二丁目の奥にあるケーキ屋にでも誘おうか。

 それは銀座でデートしているみたいでいいな、と思った。


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