僕は二度、君に恋をする
でもなかなか切り出せずに、譜面の話をのらりくらりと続けていたら、
「マキー、行くぞー。」
と浅井先輩が現れた。
僕はマキとふたりでいたところを見られたことにひどく動揺したし、浅井先輩は男の僕らからしたら怖く見えるので目をつけられるのではないかと縮み上がった。
ところがふたりの方は余裕なもので、マキは
「こちらジョンレノン。いつも伴奏頼んでる。」
なんて彼に僕を紹介したり、先輩も先輩で
「おう、マキがいつもお世話になってます。」
なんてお兄ちゃんみたいなあいさつをしてきて、僕はリア充の余裕にタジタジだった。
おまけにふたりは僕や他のお客さんの目もはばからずに、外国人のように腕を組んで密着して去って行ったものだから、僕はたまげてしまった。
同時に、マキがとっても幸せそうに笑って彼に絡みついていたのが、脳裏にこびりついて離れなかった。