僕は二度、君に恋をする
「どうしたの?」
とぼとぼと階段を降りていたら、下からヴァイオリン科の由理が登ってきた。
「すごい顔してるから、つい声かけちゃった。ひさしぶりだね、元気にしてた?」
音楽高校時代からの同級生である由理は、しばらく会わなくても何でもお見通しのようだ。
「例えばさ、好きな女の子が失恋した時に、なんて声をかけたらいいと思う?」
「んー、ご飯でも行かない?」
「え?」
「って言うかな、わたしなら。」
自分が誘われたのかと思って驚いた。由理とは長い付き合いだが、ふたりでご飯に行ったことはない。
「ってわけで、今夜何かある?ご飯でも行こうよ。」
「ええ?」
「まさかカタブツのジョンから、恋バナが聞ける日が来るとはね。おもしろいから聞かせて、その彼女のこと。」
僕らは数時間後に待ち合わせの約束をして、ひとまず別れた。彼女は三階へ、僕は二階へ。