僕は二度、君に恋をする
3.コーヒー、ミルクなしで
来たのは駅の向こうのワインバー。生ハムをつまみながら、赤ワインを傾ける。
「そっかぁ。浅井先輩ねぇ。イケメンだよねぇ。」
やっぱりそう思うものなのか。マキの彼氏、もとい、元彼は、女子の憧れなのか。
「でもジョン、今チャンスなわけでしょう?」
「それって、弱っているところに漬け込むようで、めっちゃ失礼じゃん。」
由理が横目に僕を見る。
「漬け込めとは言ってない。」
「すいません。」
「包み込め。」
僕は口をあんぐり開けて由理を見る。こいつ、恋愛について指南できるほど、こんなに女だったっけ?
「たぶん彼女、ジョンのことちょっとは好きなんだと思う。
でも、浅井先輩の男らしいところとか、顔がイケメンとか、女の子扱いしてくれるところとかに、惹かれていたわけ。」
由理を女として見ていなかったあたり、僕の女の子扱いのできなさについては心当たりがあり過ぎた。
「でも先輩は、ジョンのようにレッスンについて行くこととか、いつも一緒に曲を勉強することとか、合わせの後にお茶をしておしゃべりすることはできなかったわけ。
つまりそれは、ジョンにしかできないことなんだよ。」