僕は二度、君に恋をする
由理はそこで赤ワインをぐっと飲む。
「音楽に恋したなら、音楽で支えてあげなよ。」
由理の言葉に、思い出した光景があった。
小学校四年生の頃、ピアノと並行して続けていたヴァイオリン。
一度だけ参加した、所属していた子どもオーケストラの、よその団体との合同合宿で会った、ヴァイオリンのルイーゼという名前の女の子に、僕は初恋をした。
彼女は僕より年はひとつ下で、合宿参加者の中では最年少だった。
ヴァイオリンパートの難しい箇所で続々と先輩が間違える中、僕の隣に座る彼女だけは完璧に弾き切ったのだ。
それを見た先生方が、年功序列だった席順を並べ替えて彼女をコンサートマスターにしたら、先輩たちから大ブーイングが上がった。